国立西洋美術館で開催されている
「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展を鑑賞してきました。
今回の印象派展は、屋外の風景ではなく、「室内」という空間に焦点を当てた企画です。
印象派というと、戸外で光を追いかけた風景画のイメージが強いですが、本展では、19世紀後半の都市生活者たちが、どのように室内空間に価値を見いだしていったのかが、静かに、しかしはっきりと伝わってきました。
室内を「文化空間」として整え始めた19世紀後半
展示を通して特に印象に残ったのは、19世紀後半、都市の富裕な市民層(ブルジョワジー)を中心に、快適で洗練された室内空間そのものが一つの文化的価値として意識されるようになったという点です。
絵画の中には、
- 室内でピアノを弾く女性
- 読書や会話を楽しむ静かな居間
- 家と外のあいだに設けられた温室
- 花が活けられたテーブルや窓辺
といった場面が数多く描かれていました。
それらは単なる日常の記録というより、生活様式そのものが教養や美意識を示す時代に入ったことを物語っているように感じられます。






自然を「外」から「室内」へ取り込む発想
大自然は、それ自体が人間の感性を刺激し、美しさを感じさせてくれます。
しかし、都市化と工業化が急速に進んだ19世紀後半、人々は自然をただ外で眺めるだけでなく、室内空間の中に取り込む形で味わおうとするようになったのではないでしょうか。
- 花を切り取り、室内に飾る
- 音楽を家庭の中に持ち込む
- 温室を設け、管理された自然を楽しむ
そうした行為は、自然を排除するのではなく、生活の一部として再構成する試みだったように思います。
文明の成熟が生んだ美意識
印象派の室内画からは、
自然・芸術・日常生活が一体となった、成熟した文明の気配が感じられました。
この感覚は、日本の明治・大正期に、富豪たちが広い庭園に山や川を象徴的に配置し、自然そのものを設計した発想ともどこか重なります。
自然をそのまま享受する段階から、自然を編集し、空間として味わう段階へ。
その移行期の空気が、本展の室内画には静かに封じ込められているようでした。
印象派を「室内」から眺めるという体験
今回の展示は、
「印象派=屋外風景」という固定観念を崩し、近代都市に生きる人間の感性の変化を考えさせてくれる内容でした。
派手さはありませんが、生活の中に自然と芸術を取り込もうとした人々の姿が、今の私たちの暮らしとも静かに響き合います。
印象派を何度も見てきた人ほど、新しい視点で楽しめる展覧会だと思います。
展覧会の基礎情報
- 展覧会名:
オルセー美術館所蔵
印象派―室内をめぐる物語 - 会場:
国立西洋美術館(東京都台東区・上野公園) - 会期:
2025年10月25日(土)〜2026年2月15日(日) - 開館時間:
9:30〜17:30(金・土は20:00まで)
※入館は閉館30分前まで - 休館日:
月曜日(祝日の場合は翌平日) - 観覧料(当日):
一般:2,300円
大学生:1,400円
高校生:1,000円
中学生以下:無料
※料金・開館情報は変更される場合があります - 所要時間の目安:
約1時間半〜2時間
常設展


常設展も新しく購入した作品を展示したりレイアウトを少し変えたりと飽きない工夫がされていますね。観覧料は500円だし、65歳以上は無料というのもいいですね。

今回は、「印象派展×大絶滅展 上野おとなりセット券」で西洋美術館も行きましたので、丸半日かけて上野で美術館と博物館を鑑賞しました。


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