AIとアート──一見すると最も遠い存在のように思えるこの2つが、実は非常に高い親和性を持っているのではないか? そう思わせてくれる展覧会が、森美術館で開催中の「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」です。
この展覧会は、AI、ゲームエンジン、VR、生成AIなどの先端技術を用いた現代アート作品を集めたものですが、その中で描かれているのは「技術そのもの」ではなく、「人間の感情」「関係性」「倫理観」──つまり、むしろ人間の根本にあるものでした。
展示概要と主題
本展では、AIやデジタル空間を使って、私たちが普段見落としがちな“感情の構造”や“自己と他者の境界”を再構成しようとする作品が並びます。
テーマは明確にして「マシンと感情」「データと身体」「ゲームと現実」の接点にあります。アートとテクノロジーの融合というよりも、テクノロジーがどこまで“人間らしさ”を再現し、あるいは超えていけるかという、問いかけが強く印象に残ります。
その意味では、技術の進歩を賞賛する展示ではありません。むしろ、不完全さや違和感、ズレの中にこそ、人間らしさを発見していく構成が際立っていました。
印象に残った作品たち
◉ 感情を学習するAIの映像作品表情・音声・反応を通して“愛されているか”を判断しようとするAIの試み。判断の不完全さが逆にリアリティを持ち、観ているこちらの感情が揺さぶられる。
◉ ゲーム空間と詩が融合したインスタレーションレトロなゲーム風グラフィックに、AIが生成した詩が重なり合う。ノスタルジーと未来感が混ざり合った奇妙な心地よさ。
◉ サウンド・光・振動による没入体験音と光、そして物理的な振動が同期して体に訴えかけるインスタレーション。鑑賞というより“体験”そのもの。
テーマ性の深さと展示構成
マシン・ラブ展の強みは、見た目の派手さではなく問いの深さにある。AIや機械が生み出す「愛」「共感」「つながり」とは何か?──その問いが作品ごとに形を変えて立ち上がってくる。
展示の順路も、感覚的な没入から始まり、次第に倫理・社会・人間の根源に切り込む構成になっている。技術を使いながらも、最後には観る者自身に問いを返す流れは、非常に秀逸。
展覧会情報(公式サイトより)
会期:2025年2月13日(木)~6月8日(日)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー 53階)
開館時間:10:00~22:00(火曜は17:00まで)
休館日:会期中無休
料金:一般 2,000円〜(曜日によって異なる)
公式サイト:森美術館 マシン・ラブ展
まとめ
マシン・ラブ展を見終えたとき、感じたのは「これは“未来の展示”ではなく、“今の私たち自身”の姿だった」ということです。
AIやゲームがアートと結びつくことで、かえって人間の不完全さや曖昧さが浮き彫りになる。だからこそ、この展覧会は「難しいけれど、強く記憶に残る」体験になるのだと思います。
先端技術が、計算などの能力を各段に広げる事になれていましたが、今からは芸術脳も拡大してくれるようになるのですね。
今まで、絵を描いていた人たちが、今度は、デジタルアートを制作し始めるのでしょう。私も、やり始めたいと強く思いました。
追記
平日昼間に行きましたが、8割は海外の人たちでした。ここもインバウンドの波です。しかし、それでもそんなに混んでなかったので、インバウンドがこなかったら、ガラガラの展示会だったのでしょうかね。
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