アートと脳科学:ミュージアムは黒字になりにくいけれど、なぜ重要なのか

文化論

ミュージアムの人気の企画展にいくと超満員で時間指定制になっているものもあります。「結構、皆、アート好きなんだな」と感心する瞬間です。

ミュージアムの企画展のチケットは、2,500~3,000円くらいでしょうか。映画館のチケットは大体2,000円くらいなので、まあまあの値段はしますよね。

これは、そこそこビジネスとして成り立っているのではないかなと思って、調べてみました。

結論は、赤字で、黒字のミュージアムは世界中でもほとんどないそうです。日本の国立美術館の収入の6割は公的支援で、入場料収入は、1割強くらいしかありません。

文科省の令和3年度の資料によると、美術・博物館数は、1,305にたいして、美術館来館者数は、コロナ前は約1.4億人(2017年)だそうです。映画は、映画館数600弱に対し、入場者数(2022年)は、約1.5億人(2022年)なので、映画館の倍の数の美術館があって、入場者は、同じくらいという事になります。

映画館の倍も美術館があるのは驚きです。県別で一番多いのは、長野県で110館です。映画館は16しかありません。東京は、88館で映画館は82とほぼ同数です。

たくさんの人がミュージアムを訪れているイメージですが、それは企画展の時だけで、常設展示には人はあまり集まらないそうですが、映画と同じくらいの入場者はいるのですね。

もともと、ミュージアムは、公益性・公共性の高いもので、人々に多くの価値を与えることができます。

そういうこともあり、脳科学者の中野信子さんと東京藝術大学美術館准教授の熊澤弘さんの対談の『脳から見るミュージアム』を読んでみました。

中野さんに言わせると「美術を可能にする脳領域というのは、私たちの損得と密接に関わっていて、このセンスがきちんと領域として成熟、機能している人の方が人間社会、あるいは生物として生存適応的であると考えることができるんです。」、なぜなら「先々のため、あるいは皆のためにふるまう、その行動の規範を私たちは「美意識」と呼びます。」なので、「美を持たない種族より、美を持っている種族のほうがより生存適応的なのかもしれません。アートは明日生きるために必要でないかもしれないけれど、100年後も200年後も生きのびるためには必要なものなのです。」ということだそうです。

また、疲れた脳を「整える」効果もあると表現されています。

私も美術館に行って、何百年前の絵画などを見て、まさに昨日描かれた絵のような気がして、当時の人と同じように鑑賞している自分が時空を超えたような存在になったような感覚になるときがあります。

美意識を整えるといいますか。

美術館に行くのは、そういう感覚を味わいに行っているのかもしれません。

昔の資産家が何故美術品を収集しようとしたのかと調べたこともありましたが、そういう精神的に整えることだったのではないかと思います。

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日本は、世界に類をみないミュージアム大国だそうです。これは幸せな事で、ミュージアムは、とても身近に存在していて、国にが、日本国民に必要なものだとして公的支援をしているわけなので、利用しない手はないですね。

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